てまぬきごはん 冷凍でおいしい生活
PR ニップン彩りごはん。
トピックス

【消費税減税と冷凍食品】冷凍食品専門家が解説、過去の増税と「初の減税」の2年間

2026年11月8日

2027年4月から2年間、スーパーなどで買う食料品の消費税率が8%から1%に下がる見通しです。関連法案は11月6日に衆議院を通過し、現在は参議院で審議されています(出典:NHK、2026年11月6日時点)。1989年の導入から37年、消費税は上がり続けてきました。税率が下がるのは今回が初めてです。

過去の消費税増税のとき、食品や冷凍食品には何が起きたのか。その振り返りをもとに、初めての減税が冷凍食品にどのような影響があるか解説します。

消費税の歩み:3%から10%へ

時期消費税 税率主な出来事
1989年4月3%竹下内閣で導入
1997年4月5%金融危機による景気後退と時期が重なる
2014年4月8%駆け込み需要と反動減が大きく出る
2019年10月10%(食品は8%)初の軽減税率。外食と酒類は10%
2027年4月(予定)食品のみ1%(2年間)初の引き下げ

10%への引き上げは、2014年の増税後に景気が冷え込んだことなどから2度延期されました(出典:ニッセイ基礎研レター)。

増税のとき、食品と冷凍食品に何が起きたか

日本冷凍食品協会の統計で、冷凍食品の国民1人当たり消費量を見てみます。これは、国内生産量・冷凍野菜輸入量・調理冷凍食品輸入量の合計を人口で割った数字です。消費税が導入された1989年と、5%になった1997年は、冷凍食品市場の拡大期にあたります。1人当たり消費量は1988年の9.7kgから1989年に10.2kg、1990年に10.8kgと増え続けました。1997年には17.4kg、1998年には18.1kgまで伸びています(出典:日本冷凍食品協会「統計資料データグラフ(国内消費量推移)」)。増税の前後に目立った落ち込みはなく、税の影響は数字に表れていません。なお、1997年からは調理冷凍食品の輸入量が集計に加わっており、この年の伸びにはその分も含まれます。

2014年は増税前の3月、全国のスーパー売上は前年同月比9.4%増と、1989年以来の伸び率になりました(出典:J-CAST)。食品では米や調味料など日持ちするものが買いだめされ、4〜6月期にはその反動で支出が大きく減りました(出典:総務省統計局「家計調査」)。

冷凍食品もその一つです。日本チェーンストア協会の統計を分析した流通経済研究所の資料は、冷凍食品を含む「その他食品」が3月に7.6%増、4月に8.0%減だったとし、冷凍食品を増税前のまとめ買いの対象に挙げています(出典:流通経済研究所「消費増税後の流通」)。日本冷凍食品協会も、2014年の国内生産がわずかに減った要因として、消費増税による家計消費の低迷と、前年末の農薬混入事件を挙げました(出典:日本冷凍食品協会「平成26年 冷凍食品の生産・消費について」)。1人当たり消費量も2013年の21.7kgから2014年に21.3kg、2015年に21.1kgとわずかに減りました。ただ、2016年には21.5kgに戻り、2017年には22.5kgと当時の過去最高を更新しています。

2019年の10%への引き上げでは、冷凍食品は軽減税率の対象となり、8%のまま据え置かれました。1人当たり消費量はこの年も23.4kgと前年を上回っています。最新データの2025年には国内消費量が初めて300万トンを超え、1人当たりの年間消費量は24.6kgと過去最高になっています。

消費税増税を上回る冷凍食品の需要

人口が減る中でも1人当たりの消費量が伸び続けていることは、冷凍食品が一時的な節約の手段ではなく、毎日の食卓に欠かせない存在として定着したことを示しています。

消費税が導入された1989年の10.2kgと比べると、2025年の1人当たり消費量は約2.4倍です。この間に税率は3%から10%(食品は8%)まで上がり、近年は原材料高による値上げも続きました。それでも消費が伸びてきたのは、冷凍食品が「安いから選ばれる」商品から、「便利でおいしいから選ばれる」商品へと変わってきたからだと考えられます。

お弁当のおかずから、夕食の主菜、一人分の食事、もう一品の副菜まで、冷凍食品が使われる場面は大きく広がりました。こうした暮らしに根づいた需要は、税率の上げ下げに左右されにくいものです。

2027年の減税:家庭用と中食には追い風

(出典:国税庁リーフレット)

減税の対象は、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品です。スーパーで買う冷凍食品や惣菜、弁当、テイクアウトは1%になります。一方、店内での飲食と酒類は10%のままです(出典:PCA「食品消費税率1%はいつから?」)。

家庭用の冷凍食品には、価格の面でプラスに働くと考えられます。原材料や物流費の上昇で値上げが続いてきた中、税率が7ポイント下がる効果は大きいと考えられます。高市総理も国会で、引き下げ分は基本的に価格に反映されるとの認識を示しています(出典:日本経済新聞)。

外食との税率差は、2ポイントから9ポイントに広がります。外食から中食や冷凍食品へと、食事の場が家庭に移る流れを後押しする可能性があります。

(出典:国税庁リーフレット)

注意したいのは施行の直前です。日持ちする冷凍食品は、安くなるまで待とうという買い控えが起きやすい商品です。2027年2〜3月に売れ行きが鈍り、4月に戻るといった動きは想定されます。ただ、値札の貼り替えが間に合わない場合などに、2月から1%での価格表示を先取りできる特例も予定されており(出典:国税庁リーフレット)、小売の対応次第で揺れは小さくなります。

消費者には素直にうれしい減税

消費者にとって、今回の減税は素直に歓迎してよいものです。総務省の家計調査(2025年、二人以上の世帯)をもとにした試算では、減税分がすべて価格に反映された場合、食料品の負担は月約4,800円、年間で約5.8万円軽くなります(出典:NiCS くらしのコンパス)。

減税をめぐっては、財源や事業者の事務負担など課題を指摘する報道も目立ちます。ただ、毎日の食卓にかかる税が下がること自体は、家計にとって確かなプラスです。コスト増加による値上げは続きますが、2年間は消費者の負担が下がります。減税により普段使いの冷凍食品を上手にそろえたり、これまで手が伸びなかった新商品を試したりする良い機会になると考えられます。

2年後の2029年4月には、食料品の税率は8%に戻る予定です。政府は減税の終了に合わせて、中低所得の働く人を対象に、所得に連動した給付「就業者負担軽減支援金」(いわゆる給付付き税額控除)を本格的に導入するとしています(出典:内閣官房)。この制度も含めて、税率が戻ったときに家計の負担が重くならないよう、引き続き議論を進めてほしいところです。

業務用冷凍食品には逆風の面も

冷凍食品の国内生産のおよそ半分は、外食や給食、惣菜向けの業務用です。外食の客足が中食や家庭での食事に移れば、外食向けの業務用冷凍食品は需要が減るおそれがあります。

(出典:日本冷凍食品協会「令和2年 冷凍食品の生産・消費について」)

こうした動きは、2020年のコロナ禍ですでに経験しています。外食産業の落ち込みを受けて、業務用冷凍食品の国内生産は数量で前年比87.0%、金額で85.9%と大きく減り、数量は1990年以来30年ぶりに70万トン台となりました。同じ年、家庭用は数量・金額ともに過去最高を記録しています。食事の場が家庭に移ると、業務用と家庭用で明暗が分かれることがわかります(出典:日本冷凍食品協会「令和2年 冷凍食品の生産・消費について」)。

また、外食産業、飲食店では、売上にかかる税率は10%のまま、食材の仕入れにかかる税率だけが1%に下がるため、仕入れ価格が下がっても、納める消費税が増える可能性が指摘されています。外食の経営が厳しくなれば、業務用冷凍食品にも影響が考えられます。

外食側も手をこまねいているわけではありません。税率差の拡大を受けて、外食各社は持ち帰りの拡充を急いでいます(出典:時事ドットコム)。また近年は、外食企業による家庭用の冷凍食品事業への参入も広がっており、この流れは今回の減税をきっかけにさらに強まる可能性があります。

(左:ジョナサン、右:ロイヤルホストの冷凍食品)

(左:大阪王将、右:吉野家の冷凍食品)

外食チェーンの冷凍食品参入への期待と課題については、こちらの記事で詳しく解説しています。

一方、惣菜や弁当を作る中食向けの業務用冷凍食品には、需要増の恩恵が及ぶ可能性があります。業務用は、売り先によって明暗が分かれそうです。

企業は2年間をチャンスに、ただし踊らされずに

メーカー、食品卸、小売にとって、この2年間は売上を伸ばすチャンスです。お得感が高まる時期に、冷凍食品の品質や便利さを新しい客層に知ってもらえれば、減税後も続く需要につながります。コロナ禍で冷凍食品を使い始めた人が、その後も使い続けたのと同じ構図です。

一方で、今回の減税は2029年3月末までの時限措置で、その後は8%に戻る予定です。戻る直前には駆け込み需要、戻った後には反動減が考えられ、2014年と同じような揺れがもう一度訪れることになります。

そもそも減税は、業界が抱える根本的な課題を解決するものではありません。冷凍食品各社は原材料、エネルギー、物流、人件費の上昇に対して価格改定を重ねてきましたが、コスト上昇分を十分に転嫁できていないのが実情です(出典:日本冷凍食品協会 事業報告)。今年度の第1四半期も、大手各社は値上げで増収となった一方、節約志向で市販用の販売数量が減り、減益が相次ぎました(出典:日本食糧新聞)。

減税による売上増に安心するのではなく、この2年間を、適正な売価への理解を広げ、生産の効率化や商品価値の訴求を進める期間にすることが大切です。税率が戻ったときに需要が離れないかどうかは、この期間の取り組みにかかっています。

PR(サイト共通広告)

※本記事の内容とは関係のない、サイト共通の協賛広告です。

記事の監修者

西川 剛史
西川 剛史冷凍王子/冷凍生活アドバイザー
【新刊レシピ本】かんたん&時短! 冷凍だからこそおいしい! 神うま節約レシピ (TJMOOK,宝島社)1,397円(税込)
節約になる冷凍レシピが195品 掲載!レシピ本の詳細はこちら(https://amzn.to/4sXVbb2)

高校生のころから冷凍食品に興味を持ち、冷凍食品会社に就職。冷凍食品の商品開発などの経験を生かし、現在は冷凍専門家として活動中。 冷凍王子としてテレビ番組「マツコの知らない世界」「ヒルナンデス!」「王様のブランチ」「NHKごごナマ」など、その他テレビ、雑誌などに多数出演。
2016年8月には家庭での冷凍テクニックを理論的に体系的に学べる資格講座として「冷凍生活アドバイザー養成講座」を開講(運営 日本野菜ソムリエ協会)。冷凍テクニックをまとめた冷凍本のシリーズ累計発行部数は30万部を突破。
プロフィール詳細はこちら(https://vefroty.co.jp/profile/)