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【衝撃】冷凍便は「ずっと−15℃以下」じゃない!?データが示す温度上昇の真実と、美味しさを死守する「賢い梱包術」

2025年12月5日

お取り寄せグルメやネットスーパーなどから届く冷凍便。冷凍食品を冷凍温度で自宅まで届けてくれるので、とても便利で活用されている方も増えていると思います。しかし、箱を開けたとき、「あれ? ほんのり柔らかいかも……」と不安になった経験はありませんか?

「クール便で送っているんだから、家の冷凍庫に入っているのと同じでしょ?」
そう思っているなら、少し危険かもしれません。

実は、今回ヤマト運輸と佐川急便の冷凍便輸送時の温度変化データを測定したところ、「配送中に温度が上昇するタイミングがある」という内容でした。データ数としては各社往復の2回のみになり少ないですが、実測データとしてご紹介をしたいと思います。

今回は、なぜ冷凍便なのに温度が上がってしまうのか、その理由を解明しつつ、あなたの大切な荷物を温度変化から守り抜くための、少しの手間で効果的な「梱包テクニック」もご紹介します。

冷凍便の温度上昇はなぜ起きる?

まず知っておいていただきたいのは、大手配送業者の冷凍便は、決して「魔法の冷凍庫」ではないという現実です。

ヤマト運輸の「クール宅急便」や佐川急便の「飛脚クール便」は、基本的に−15℃以下の冷凍温度帯で管理されています(ヤマト運輸は「-15℃以下」、佐川急便は「-18℃以下」と記載)。しかし、両社とも公式サイトで「外気に触れるタイミングがある」ことを正直に明記しているのをご存じでしょうか。

【ヤマト運輸】
「クール宅急便は、定温一貫輸送ではありません。積み込み・仕分け・集配時など、短時間お荷物が外気に触れますので、ご了承ください。」
出典:ヤマト運輸「クール宅急便」

【佐川急便】
「お荷物の積み込みや集荷・配達時には、一時的に外気に触れる場合がございます。」
出典:佐川急便「飛脚クール便」

つまり、トラックへの積み替えや、営業所での仕分け作業、そしてドライバーさんがトラックから玄関まで荷物を運ぶあの時間。これらはすべて、真夏であれば30℃を超える外気に荷物がさらされる「温度上昇のリスクゾーン」なのです。現場ではもちろん、冷凍品であれば外気にさらされる時間を短くする意識はされていますが、それでも温度上昇が発生してしまうのは仕方がないと、依頼する側にも認識が必要です。

冷凍便の温度変化のデータについて

それでは実際には温度がどのように変化しているのでしょうか?ヤマト運輸および佐川急便の冷凍便の輸送時の温度変化を測定しました。

輸送時の温度変化測定の実験条件

実験条件は以下のとおりです。

梱包内容物:冷凍食品10パック(冷凍餃子、冷凍パスタ、冷凍枝豆など各1種類)

 ※現実の冷凍食品の個配輸送を想定し、複数商品の梱包、お互いの冷気による保冷効果を再現した

梱包物:ダンボール(サイズ横30cm×縦23cm×高さ13cm)、保冷剤や緩衝材などはなし

温度測定機器:ティアンドデイ データロガー おんどとりTR42

温度測定方法:ダンボール内の中心部分に温度センサを設置し、上下が冷凍食品で挟まれている空間温度を測定した

 ※冷凍食品の中心温度、品温ではなく、あくまでダンボール内の空間の温度を測定

 ※梱包後に冷凍庫で保管し、12時間以上予冷をし、中心温度が冷凍温度になっていることを確認

輸送地点:東京都内から大阪府内へ発送、さらに翌日に同じものを大阪府内から東京都内(同じ地点)へ発送した

実験日時:ヤマトクール便 2023年6月20日〜23日、佐川急便クール便 2023年7月3日〜6日

ヤマトクール便の温度変化測定

データ:ヤマトクール便の温度変化測定(データ提供:西川剛史)

データを見ても、やはりこの「積み替え・仕分け」のタイミングと思われる箇所で、一時的な荷物の温度上昇が確認できました。しかし、その直後に温度が下がっていることから、「積み替え・仕分け」にて温度上昇が起こる認識があり、そのあとはより早く低い温度にする対応が取られていると思われます。気になる点としては、輸送時、特にトラックによる長距離輸送時に徐々に温度が上がっている点が気になります。長距離輸送時に長い時間をかけ温度がじわじわ上昇し、そのあとの「積み替え・仕分け」でさらに一気に温度上昇が起きています。ここは事業者側での対策が必要かと思います。

佐川急便クール便の温度変化測定

データ:佐川急便クール便の温度変化測定(データ提供:西川剛史)

※今回のデータ測定はヤマトクール便で使用した荷物をそのまま同じものを佐川急便クール便でも使用しました。さらにヤマトクール便の荷物が戻ってきてから、佐川急便クール便の発送をしているため、実験時期に遅れがあり、上記に記載している通り最高気温にも差があります。そのため、単純にヤマトクール便と佐川急便クール便の比較にはなっていないことをご理解ください。

 

佐川急便クール便の場合も同じく「積み替え・仕分け」のタイミングと思われる箇所で、一時的な荷物の温度上昇が確認できました。佐川急便クール便の方は集荷から長距離輸送に入る前までに一気に温度が上昇し、そのあと長距離輸送のときに徐々に温度が下がっていく結果でした。集荷から長距離輸送までの対応に課題があるように感じます。

 

今回の測定結果は、測定回数の少なさや、測定時期や外気温の違いなどがあり、各社の冷凍輸送温度を必ずしも示すものではありません。この点についてはご理解をお願いいたします。

しかし、冷凍便とはいえ、必ずずっと同じ低温度を維持しているわけではないことは理解いただけたかと思います。そのため冷凍便を依頼する発送主側で保冷効果を高める工夫を実施する必要があります。配送業者任せにするのではなく、「温度上昇を見越した梱包」で自己防衛することが必要なのです。

プロ直伝! 冷凍便の保冷効果を劇的に高める「梱包術」3ステップ

では、具体的にどうすればよいのでしょうか? ちょっとしたことで、保冷効果は劇的にアップします。

ステップ1:最重要は「複数の冷凍食品」を梱包

冷凍食品そのものに保冷効果があるため、複数の冷凍食品を一緒に梱包することでお互いの冷気で低温度を維持することができます。逆に1パックなど少量の冷凍食品だと、外気の温度がダイレクトにダンボール内の空気を温めてしまうため、温度上昇が激しくなってしまいます。

事業者がネット通販などで発送する際も1パックでの発送はさけ、複数パック以上、またはセット販売に限定など、条件をつけて販売する方が冷凍輸送上も望ましいです。どうしても少量になってしまう場合は保冷剤を入れることをお勧めします。

さらに複数の冷凍食品を使用し、それらを「密着」させることも重要です。密着せずに空気の部分が多くなるほど、温度上昇が激しくなります。送る量に対して適切な大きさのダンボールを用意したり、密着が外れないように袋で包んでから梱包するなどの対応が必要です。

冷気を保つ上で密着の重要性については以前の記事でも解説をしているので、そちらもご覧ください。

※宅急便ではなく冷凍食品の持ち帰りに関する記事になります。

【冷食のプロ直伝】保冷効果を高める冷凍食品の正しい包み方

ステップ2:キンキンに「予冷(よれい)」する

※イラストは「Gemini」にて生成

意外と重要なのが荷物を芯まで冷やしておくこと「予冷」です。

配送業者のトラックは「冷やす場所」ではなく「冷たさを維持する場所」です。中途半端な温度の荷物を出すと、配送中に溶けるだけでなく、周りの他の荷物まで溶かしてしまう迷惑行為になりかねません。ヤマト運輸や佐川急便では、発送前の予冷期間として12時間以上を推奨しています。表面だけでなく、中心部までしっかり冷凍温度にしておく必要があります。

さらにはダンボールに梱包して、ダンボールごと冷凍庫に入れて予冷することも重要です。ダンボールの断熱効果により、ダンボール内の冷気を閉じ込めることができます。逆に発送直前にダンボールに冷凍食品を梱包すると、ダンボール内が常温の状態にあり、その後冷凍庫に入って外から冷気を当てても、ダンボールの断熱効果で内部がなかなか冷えない状態になってしまいます。

ステップ3:冷気は「上から下へ」!保冷剤の配置には法則がある

箱詰めするとき、保冷剤をどこに入れていますか?
「なんとなく隙間に……」ではもったいない!

冷たい空気は重く、上から下へと流れる性質があります。つまり、保冷剤は「荷物の一番上」に置くのが正解です。

  1. 箱の底に緩衝材を敷く。
  2. 冷凍した荷物を入れる。
  3. 荷物の上に保冷剤を乗せる。

さらに保冷効果を最大限に高めたい場合は、「サンドイッチ方式」がおすすめ。底と側面に保冷剤を配置し、最後に上から蓋をするように保冷剤を置けば、冷気のカーテンで荷物を包み込むことができます。

究極の選択:ダンボール vs 発泡スチロール、どっちが良いの?

※イラストは「Gemini」にて生成

よくある疑問が、「ダンボールと発泡スチロール、どっちで送るべき?」という問題です。

基本の推奨は「段ボール」です。
意外に思われるかもしれませんが、ヤマト運輸の公式サイトでも、冷気を通しやすい段ボールでの梱包が推奨されています。発泡スチロールは断熱性が高すぎて、トラックの冷凍庫の冷気が中まで届かず、逆に中の温度を下げにくくしてしまう場合があるからです。

ダンボールは冷気を通しやすいため推奨しております。※発泡スチロールの場合、外からの冷気を通さないため、中に保冷剤を入れて温度調整をする必要があります。
出典:ヤマト運輸「魚介類・肉類(クール宅急便・冷凍)の梱包方法」

しかし、「温度上昇対策」を最優先するなら……
今回のテーマである「配送中の一時的な温度上昇(外気への接触)」から守るためには、「発泡スチロール箱 + 強力な保冷剤(またはドライアイス)」という組み合わせが、実は最強の防御力を誇ります。

発泡スチロールは外の熱を遮断する力が強いため、仕分け時などの「常温放置タイム」に威力を発揮します。ただし、箱の中が「密室」になるため、中に入れる保冷剤の量が不十分だと、逆に自分の熱で溶けてしまうという諸刃の剣でもあります。

  • 手軽に送りたい・一般的な冷凍食品ダンボール(隙間をなくす、保冷剤や新聞紙など)
  • 絶対にとかしたくないアイスや高級肉発泡スチロール(中にたっぷり保冷剤やドライアイスを入れる)

このように使い分けるのがおすすめです。

まとめ:美味しい冷凍便は「梱包」で作られる

データが示す通り、冷凍便といえども配送中の温度変化は避けられません。しかし、それを怖がる必要はありません。「配送中に温度は上がるものだ」という前提に立ち、

たくさんの冷凍食品を梱包

キンキンに予冷する

保冷剤を活用する

    この3つを実践するだけで、届いたときの品質は格段に変わります。
    次に誰かに冷凍便を送るときは、ぜひこの「最強の梱包術」を試してみてください。箱を開けた相手の「美味しい!」という笑顔が、何よりの証拠になるはずです。

    記事の監修者

    西川 剛史
    西川 剛史冷凍王子/冷凍生活アドバイザー
    高校生のころから冷凍食品に興味を持ち、冷凍食品会社に就職。冷凍食品の商品開発などの経験を生かし、現在は冷凍専門家として活動中。 冷凍王子としてテレビ番組「マツコの知らない世界」「ヒルナンデス!」「王様のブランチ」「NHKごごナマ」など、その他テレビ、雑誌などに多数出演。
    2016年8月には家庭での冷凍テクニックを理論的に体系的に学べる資格講座として「冷凍生活アドバイザー養成講座」を開講(運営 日本野菜ソムリエ協会)。冷凍テクニックをまとめた冷凍本のシリーズ累計発行部数は30万部を突破。
    年間約1,000品の冷凍食品を試食し、累計1万品以上の冷凍食品を実食している。さらには全国の冷凍食品工場を累計80ヶ所以上を回る、冷凍食品工場マニアでもある。その経験を活かし、冷凍食品コンサルタントとして活動。
    常に冷凍を切り口に新しい活動や事業を積極的に行っている。
    プロフィール詳細はこちら(https://vefroty.co.jp/profile/)