全国のラーメンを食べ歩くラーメンライター、井手隊長です。
止まらない冷凍麺の進化の中でも、「これはちょっと驚いた」と感じさせる商品がたびたび登場する。ニチレイの「レンジで冷たい 盛岡風冷麺」は、そんな驚きを真正面から投げてくる一品だ。

まず、パッケージを見た瞬間に目を疑う。冷麺の写真の上に、堂々と氷がのっているのである。
普通なら「冷たい麺=冷蔵・流水・氷水」といった工程を想像するが、この商品は違う。なんと電子レンジで調理する冷麺なのだ。冷凍食品なのだからレンチン自体は普通のことだが、「レンジで温めるのに冷たい料理ができる」という発想はなかなか大胆。しかもパッケージの氷が示す通り、この商品には本当に氷が入っている。

調理は実にシンプル。パッケージを開け、トレイのまま電子レンジへ。そのまま加熱するだけだ。500Wで3分、600Wで2分40秒で完成だ。

ここで重要なのが、氷を使った独自の仕組みである。氷はマイクロ波の影響を受けにくいという性質があり、レンジ加熱しても完全には溶けない。つまり、麺や具材は温まりつつ、氷はある程度残る。この性質を利用することで、レンジ加熱後でも氷が溶け残るように設計されているのだ。

レンチンが終わってフタを開けると、そこには確かに氷が残っている。ここで水を注ぎ、麺をほぐす。すると氷と水が合わさり、麺を一気に締めてくれる。
つまりこの商品は、「加熱→麺を締める」という冷麺に必要な工程を、レンジと氷の組み合わせで逆算して成立させているのである。これはなかなか見事な設計だ。

具材は蒸し鶏、キムチ、オクラ。シンプルながら冷麺らしい構成で、彩りもよい。トレイ型なので皿に移す必要もなく、そのまま食べられるのもありがたい。
麺は太めで、しっかりとした存在感。盛岡風冷麺らしく、弾力のあるモチモチ食感で、噛むたびに心地よい反発がある。冷凍麺というとやや柔らかくなる印象を持つ人もいるかもしれないが、この麺はしっかり主張してくるタイプだ。喉越しと弾力が両立しており、非常に完成度が高い。
スープはさっぱりとした味わいで、鶏ベースの旨味に、カツオの風味がほんのり重なるバランスだ。そこにキムチの酸味と辛味が少しずつ溶け出し、食べ進めるほどに冷麺らしい表情へと変化していく。
なにより、この商品で一番面白いのは「アイデア」である。
普通なら「冷たい麺はレンジでは作れない」と考えるところを、氷を入れるというシンプルかつ大胆な方法で突破した。そして、それを単なるネタ商品に終わらせず、しっかり美味しい一杯として成立させている。
冷麺は本来、麺を茹でて、冷水で締めて、具材を準備して……と、意外と手間がかかる料理だ。夏の暑いキッチンでその作業をするのは、正直しんどい。そんな課題に対して、「レンジだけで作れる」という回答を提示したのが、このシリーズなのである。一見かなり無茶な発想だが、食べてみるとその合理性と完成度に納得させられる。
冷凍食品の進化はここまで来たのか、と素直に感心する一杯。ぶっ飛んだアイデアと、それを実際の美味しさにまで落とし込んだ技術力に乾杯だ。





