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国産冷凍ほうれん草の製造工場を取材! おいしさの秘密に迫る

2025年4月17日

 今、冷凍野菜が注目されています。下処理済みで便利に使えることはもちろん、旬の時期に大量に収穫して一気に急速凍結をしているので、栄養やおいしさがたっぷり詰まっているのが魅力です。

 今回は冷凍野菜の中でも人気の「国産冷凍ほうれん草」を長年製造している、宮崎県都城市にあるイシハラフーズに協力をいただき、冷凍ほうれん草の栽培や冷凍食品工場でのこだわりを取材させていただきました。

 イシハラフーズの石原社長にご案内をしていただきます!


▼▼ YouTubeの動画もぜひご覧ください!▼▼

撮影取材協力:農業生産法人イシハラフーズ株式会社

※本記事はプロモーション案件ではありません。


【農場編】


【工場編】

 イシハラフーズは自社で農場を運営し、野菜を育て・収穫し、さらには自社工場で冷凍加工をしている会社です。全国でも自社で農場を運営しながら、その野菜を使って冷凍野菜を製造するというのは、まだまだ事例が少なく貴重な事業になります。

 まずは農場を見学させていただきました!

ほうれん草畑へ!



 農場には立派なほうれん草がたくさん育っています。畑のある宮崎県都城市は、霧島連山などの山々に囲まれた盆地で、冬は朝がとても寒く、日中はポカポカ暖かい土地。この寒暖差がほうれん草をおいしくする秘訣になります。

 おいしい野菜を作るには、土も大切。畑の土は、「黒ボク土」と呼ばれる火山灰土壌の黒い土で、豊富な栄養を含んでいます。また、都城市は蓄産がさかんな場所なので、地元の豚や鶏の堆肥を活用して土づくりをされているそうです。

「冷凍野菜」のために作る野菜



 通常、生鮮のほうれん草は、収穫までが約40日ほどで、流通しやすいように20cm程度の大きさで収穫します。

 しかし、冷凍加工用ほうれん草は短いものでも2か月、取材時の2月では110〜120日ぐらいかけてゆっくり大きくしていきます。サイズは30〜40cmくらいになり、葉に厚みがあって、おいしくて味も濃いほうれん草に育ちます。葉にしっかりと厚みがあるため、加工の「ブランチング」という茹でる工程を経ても食感がそのまま保たれます。

 イシハラフーズでは、「冷凍野菜に特化させて育てた野菜」を加工しているのが何よりのこだわり! 冷凍するからといって、B級品やよくない野菜を使っているのではなく、冷凍野菜を作るためにそれ用に野菜を栽培しています。冷凍加工したときにおいしくなることを考えています。


農場の管理をIT化

 農場に立てられているこの看板、何だと思いますか?

 実はこの看板はイシハラフーズのすべての畑に設置してあり、QRコードを読み込むと、「どこの畑か」「誰がどんな作業したか」などの情報や、作物の生育状況などがわかるようになっています。

 1日の作業の終わりに、作業者がこのQRコードを読み取って作業内容を登録することで、情報が会社全体で共有されます。情報の一元化が可能となることで、作業の効率化、商品の安全性の担保に役立っているのだそう。

 また、イシハラフーズの畑は「特別栽培農業産物」の基準で作物を作っているので、このQRコードに記録された情報に基づいて、作業内容や収穫時期なども計画。IT化を組み入れることで、さまざまなメリットがあるのです。

収穫機で一気にほうれん草を収穫!



 収穫は機械で行われます。昔は手で収穫していたそうですが、現在は機械で大量に効率よく収穫することで生産性を上げています。

 収穫機を3台使い、運搬も含めると作業者5人で1日30t程度のほうれん草を収穫。収穫後は、トラックに積み込んですぐに工場に運ばれます。

 収穫してから冷凍加工されるまで、最短ではなんと2時間というから驚き! ほうれん草は傷みやすい野菜で、おいしい冷凍ほうれん草のためには、収穫後の素早い冷凍加工が命。収穫のスピーディーさも、新鮮でおいしい商品には欠かせないわけです。

冷凍ほうれん草工場に潜入! 加工工程を見学

 入場前に毛髪除去、手洗いなど衛生面を徹底して、いよいよ工場内へ。イシハラフーズでは、1日に20〜30tのほうれん草を加工しています。

 それでは、加工の工程を追っていきます!

工程① 異物除去



 まずは収穫したほうれん草を、異物を落とすドラム式の機械に入れます。回転するドラムを通すことで、ドラムの穴へ石や葉っぱなどいろいろな異物を除去し、ほうれん草をきれいにしていきます。

工程② 水洗い



 原料をきれいな状態にしたら、ほうれん草を水洗い。バブルを使って洗浄することで、細かな汚れまで落ちやすくなります。このあと食べやすい大きさにカットをして、次の工程へ。

工程③ 目視チェック

 草などの異物を、今度は人の目で除去。イシハラフーズでは、全体を通して人の目のチェックもとても大事にされています。その後また洗浄したら…。

工程④ カラーセンサーで撃ち落とす!

 色彩選別機「カラーセンサー」という機械を通します。これは、異物や葉っぱの変色などをカメラで見てくれるもの。コンベアで通り過ぎるほうれん草をカメラがチェックし、悪いものを判別、エアーで弾き飛ばします。機械導入前は30人ほどの人の手で選別をしていたそうですが、機械化することで効率的に行えるように。

工程⑤ ボイル(ブランチング)



 洗浄したほうれん草を1分30秒程度ボイルする、ブランチングという工程。加熱はアク抜きの意味もありますし、解凍した際にドリップが出にくくなるように組織を柔らかくするためでもあります。そして、加熱により酵素活性を抑えることで、おいしく長く冷凍保存することができる、ほうれん草のおいしさを保つ大切な工程です。

工程⑥ 冷却



 ボイルし終わった熱々のほうれん草は、水で冷却します。冷やすことで熱を取って冷凍しやすくし、細菌の増殖も防ぎます。その後に脱水してよく水分を取ります。


 この段階のほうれん草を、特別に試食させていただきました! 色がとてもきれいな緑で、見るからに肉厚なのがわかります。食べてみるとほうれん草の甘さと風味があっておいしく、食感もバッチリ!

※特別に許可を得て、工場内で試食をさせていただいております

工程⑦ IQF急速凍結機でバラ凍結に



 水分を絞ったほうれん草を、いよいよ凍結します。「IQF急速凍結機」という機械で、マイナス34℃くらいで凍らせながら、さらに下から風も当てて浮き上がらせて凍らせることでスピーディに凍結させます。この後にセンサーで異物の確認や除去をしたら…。

工程⑧ 包装して完成!



こだわりの冷凍野菜をぜひ食卓に!

 今回、「国産冷凍ほうれん草」の栽培から加工までを取材させていただき、イシハラフーズのさまざまなこだわりを身近に感じることができました。

 生産をしつつ、冷凍して加工品にするまでを自社でできるというのは、日本の農業を考える上でもとてもいい事例だと思います。

 なかなか普段見えにくいところですが、安心・安全で高品質な製品が私たちに届くまでには、さまざまな企業努力があってのこと。冷凍ほうれん草を食べるときに、ぜひその背景も想像しながら食べてみてください!

さらに農業のIT化や大規模農業の課題などについて、イシハラフーズ石原社長にインタビューした動画も公開しましたので、こちらもぜひご覧ください。

記事の監修者

西川 剛史
西川 剛史冷凍王子/冷凍生活アドバイザー
高校生のころから冷凍食品に興味を持ち、冷凍食品会社に就職。冷凍食品の商品開発などの経験を生かし、現在は冷凍専門家として活動中。テレビ番組「マツコの知らない世界」「ヒルナンデス!」「王様のブランチ」「NHKごごナマ」など、その他テレビ、雑誌などに多数出演。
プロフィール詳細はこちら(https://vefroty.co.jp/profile/)